【ダナン=鳳山太成】「カナダとカナダ国民にとって最善の協定にするため、まだやるべき仕事が残っている」。カナダのトルドー首相は11日の記者会見でTPP11の最終的な合意に向けて慎重な言い回しを繰り返した。カナダは自動車の安全基準に難色を示したが、自国文化保護へのこだわりも強い。外国からの投資を制限できる「文化例外」がなければ、保護が不十分になるとの懸念がある。

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APECで記者会見するカナダのトルドー首相(11日、ベトナム・ダナン)=ロイター
トルドー氏は前任の保守党政権が進めたTPP交渉を批判して、2015年に約10年ぶりの政権交代を果たした。TPP11の交渉を拙速に進めていると国民の目に映れば支持を失いかねない。
カナダは18年3月までの妥結を目指している北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で、TPPと重複する項目についても態度を保留している。TPPで先に合意すれば、米国に対する取引材料を失う。TPP交渉でなるべく時間を稼ぎたいという事情もある。
TPP11は当初、ベトナムやマレーシアが消極的だった。カナダも両国の反対姿勢に乗った形だが、両国は国内の成長押し上げを優先し方針を転換。マレーシアの政府・与党は投資や外資進出を促す効果が大きいとし、表向きは発言を控えたが夏以降、凍結項目の絞り込みに協力し始めた。
TPPはオバマ米政権が中国をけん制する枠組みとして推進した。米国は結局離脱表明したが南シナ海問題で中国と対立するベトナムにとって安全保障上の意義はなお大きい。各国の国際的な位置取りがTPPの向き合い方にも影響している。